縞模様(しまもよう)が起こす目の錯覚いろいろ
縞模様は、見ているだけでいろいろな錯覚を起こす不思議な図形です。当サイトのゲームでも「あれ?」と思う瞬間があるはずで、その多くには名前が付いています。
ちらついて見える ― モアレ
細かい縞模様どうしが重なると、そこにはないはずの大きな縞(しま)が浮かび上がります。これをモアレと呼びます。
網戸を2枚重ねたとき、レースのカーテンが折り重なったとき、テレビに映ったストライプのシャツがゆらゆらしているとき。どれもモアレです。
2つの縞の間隔がわずかに違うと、重なる場所とずれる場所が周期的に入れ替わります。その周期が、元の縞よりずっと大きな模様として見えるのです。
スマートフォンで画面の写真を撮ると縞模様が出てしまうのも、画面の画素とカメラの画素という2つの細かい格子が重なって起こるモアレです。
傾きが違って見える ― 傾きの対比
傾いた縞に囲まれた中央の縞は、まっすぐであっても逆向きに傾いて見えることがあります。周りとの差が実際より大きく感じられるためで、これを傾きの対比と呼びます。
下の図で試せます。中央の円の縞は、つまみをどう動かしてもまっすぐのままです。周りの縞を10〜20度ほど傾けると、中央がその逆向きに傾いて見えてきます。「たしかめる」を押すと周りの縞が消えて、まっすぐな目安線が出ます。
つまみを大きく動かすほど強く見えるわけではありません。10〜20度あたりがいちばんはっきりし、45度まで傾けると弱まります。周りとの差が小さいときほど、目は差を大きく見せようとするためです。
似たことは時間をおいても起こります。ある傾きの縞をしばらく見つづけたあとで別の傾きの縞を見ると、傾きがずれて感じられます。こちらは傾き残効と呼ばれ、あとに出てくる順応の仲間です。
なお仲間外れ探しで、仲間外れが45度違うときより90度違うときのほうが見つけやすいのは、錯覚ではなく単純に差が大きいからです。このゲームは0度・45度・90度・135度の4つの向きを使うので、仲間外れとの差は45度か90度のどちらかになります。組み合わせは3通りあり、そのうち2通りが45度差です。難しく感じる回のほうが多いのは、そのためです。
見つづけると見えなくなる ― 順応
同じ縞模様をじっと見つづけると、だんだん薄く感じられるようになります。これを順応と呼びます。
目は変化に敏感な代わりに、変わらないものには鈍くなっていきます。実際、装置を使って網膜に映る像を完全に固定してしまう実験をすると、見ているものは数秒で消えます。ふだんそうならないのは、目が細かく震えつづけているからです。
この性質はうっすら見えで実感できます。同じ場所をじっと見つめていると、浮かび上がってきた縞模様に気づきにくくなることがあります。見分けるコツで「じっと見つめない」を勧めているのは、こうした理由もあります。
動いたあとに逆に動いて見える ― 運動残効
一方向に流れつづける縞をしばらく見たあと、止まっているものに目を移すと、逆方向に動いて見えます。運動残効、あるいは「滝の錯視」と呼ばれる現象です。
名前の由来のとおり、滝をしばらく眺めたあとに岩肌を見ると、岩が上へ動いて見えることから知られるようになりました。
流れる向きを続けてあそんだあと、画面から目を離すと一瞬だけ周りがゆらいで見えることがあります。数秒で元に戻る一時的なものです。
白黒から色が生まれる
白と黒しかない模様から、色の感覚が生まれることがあります。古くから知られているのは、白と黒だけを塗り分けた円盤を回すと、うっすら色が付いて見えるという現象です。これを利用したコマまで作られました。
ただし、この現象が起こるには回転や点滅が要ります。止まっている白黒の模様を眺めているだけでは起こりません。当サイトのゲームは色を一切使わず灰色の濃淡だけでできていますが、パッチが回転したり点滅したりすることもないので、この現象が出る作りにはなっていません。
ちなみに、ゲームの背景を灰色にしているのは錯覚のためではなく、縞模様の平均の明るさと背景をそろえるためです。理由は画面の明るさと見え方で説明しています。
錯覚は失敗ではない
錯覚というと「目がだまされている」という響きがありますが、多くは目のしくみがうまく働いた結果です。
変化を強調する、周りとの差を際立たせる、変わらないものへの反応を抑える。どれも、限られた情報から手早く状況をつかむための工夫です。そのしくみが、たまたま実験室のような特殊な図形に対しては行きすぎた答えを出す。それが錯覚の正体です。
ガボールパッチはまさにその「特殊な図形」の代表格です。色も輪郭も見覚えもない、縞だけの図形。だからこそ、ふだんは気づかない目のクセが表に出てきます。ガボールパッチとはもあわせてどうぞ。